モザイクレーザーとピコフラクショナル、ニキビ跡・毛穴にはどちらが向いている?論文データで比較

「モザイクレーザーとピコフラクショナル、どっちがいいんですか?」
カウンセリングでよく聞かれる質問です。どちらも「表皮を傷つけない」フラクショナル治療で、名前もなんとなく似ているため混乱しやすいのですが、働き方は根本的に異なります。
この記事では、医学論文のデータをもとに、2つの治療の仕組みと違い、どんな方にどちらが向いているかをわかりやすく解説します。
2つのレーザーはどちらも「表皮を傷つけない」治療
まず大前提として、モザイクレーザーもピコフラクショナルも、肌の表面(表皮)を蒸散・削るアブレーティブ治療ではありません。どちらも「非アブレーティブフラクショナル」に分類されます。
炭酸ガス(CO2)フラクショナルレーザーのような表面を削る治療と比べると、ダウンタイムが短く、日常生活への影響が少ないのが共通した特徴です。
ただし、肌の内側への働き方は大きく異なります。
モザイクレーザー(1550nm Er:Glassファイバーレーザー)
モザイクレーザー(Lutronic Mosaic HA)は波長1550nmの光を使い、真皮にMTZ(微細熱凝固帯)と呼ばれる微小な熱の柱を均一に形成します。表皮はほぼ温存されたまま、熱刺激が真皮の創傷治癒反応を引き起こし、コラーゲン・エラスチンの新生を促します。熱を使う分、照射後に一定の炎症反応が生じます。
ピコフラクショナル
ピコフラクショナルはピコ秒(1兆分の1秒)という極めて短いパルスで照射し、真皮内にLIOBs(レーザー誘起光学崩壊)と呼ばれるナノスケールの空洞を形成します。熱ではなく「衝撃波(光音響効果)」が主な刺激となり、コラーゲン産生を誘導します。熱ダメージがほとんど生じないことが、安全性プロファイルの違いにつながっています。
論文が示す「改善率は同等」という事実
「どちらが効くか」という点については、複数の比較研究が一致した結論を出しています。
2023年に発表されたメタアナリシス(7つの研究を統合した系統的分析)では、ピコフラクショナルとその他のフラクショナルレーザーの萎縮性ニキビ跡に対する臨床改善率を比較した結果、両群で統計的に有意な差は認められませんでした(Li et al., Journal of Cosmetic Dermatology, 2023 / PubMed ID: 37310182)。
また、アジア系患者25名を対象としたランダム化分割顔試験(顔の左右で異なる治療を行う高精度な比較試験)でも、ピコフラクショナルとCO2フラクショナルの改善率に有意差はなく、「同等の有効性」という結論が報告されています(PubMed ID: 32910030)。
さらに別の20週間の前向きRCT(アジア人対象)では、ピコフラクショナル(MLA使用)とアブレーティブEr:YAGレーザーのニキビ跡改善スコア(ECCAスコア)の低下率はそれぞれ39.1%と43.7%で、こちらも統計的に有意な差は示されませんでした(PubMed ID: 38034535)。
最終的な改善率は、どちらのフラクショナル治療を選んでも大きくは変わらないと、複数の研究が示しています。
リスクの差こそが選択の根拠になる
改善率が同等であれば、次に比べるべきはリスクとダウンタイムです。ここに2つの治療の明確な違いがあります。
炎症後色素沈着(PIH)リスク
日本人を含むアジア人の肌はメラニン産生が活発なため、レーザー後の炎症をきっかけに肌が黒ずむ「炎症後色素沈着(PIH)」が生じやすいことが知られています。
前述のメタアナリシスでは、ピコフラクショナルのPIH発生リスクは他のフラクショナルレーザーと比較して約1/6という結果が報告されています(RR=0.16、95%信頼区間:0.06〜0.45 / J Cosmet Dermatol, 2023)。ピコが熱ダメージをほぼ与えないことが、この差につながっていると考えられます。
ダウンタイムと痛み
[モザイクレーザー(1550nm)]
・ダウンタイム期間:3〜5日程度
・主な症状:赤み・微細な痂皮・軽度腫脹
・メイク再開の目安:3〜5日後
・痛みレベル:中程度
[ピコフラクショナル]
・ダウンタイム期間:1日程度
・主な症状:細な痂皮・軽度赤み
・メイク再開の目安:翌日〜2日後
・痛みレベル:中〜軽度
同メタアナリシスでは、ピコフラクショナルの疼痛スコアも他のフラクショナルレーザーと比べて有意に低いことが報告されています(MD=−1.99 / J Cosmet Dermatol, 2023)。
クレーターのタイプで適応が変わる
ニキビ跡のクレーターは形によって3種類に分類され、治療の選択に影響します。
・ローリング型(緩やかな波状の凹凸)・毛穴の開き
両治療とも有効。PIHリスクの低さからピコフラクショナルが選ばれやすい傾向にあります。
・ボックスカー型(縁がはっきりした皿状の凹み)・中等度クレーター
モザイク・ピコのどちらでも対応可能。患者さんの生活スタイルやダウンタイムの許容度によって選択します。
・アイスピック型(深い針穴状)・深いボックスカー型
非アブレーティブの2治療ともに効果の限界があります。組織を物理的に削る炭酸ガス(CO2)フラクショナルレーザーや、皮下の癒着を剥離するサブシジョンなど、別の治療法との組み合わせが必要になるケースがあります。
68のランダム化比較試験を統合したネットワークメタアナリシス(PeerJ, 2025)では、重症ニキビ跡の改善スコアランキングで上位を占めるのはCO2/Er:YAGアブレーティブ系の治療や、それにPRP・サブシジョンを組み合わせた複合治療でした(PMC12515001)。
また、アブレーティブCO2フラクショナルと非アブレーティブ1550nmの比較では、「50%以上の改善」を達成した患者がCO2で37.5%、非アブレーティブ1550nmで12.5%という3倍の差が報告されています。
ピコフラクショナルは非アブレーティブカテゴリに属するため、同様の傾向が考えられます。さらに、アジア人を対象としたスプリット顔RCT(Frontiers in Medicine, 2023)でボックスカー型(深いクレーター)の改善率を見ると、ピコMLAが20.65%、アブレーティブEr:YAGが32.81%と数値上大きな差がありました(統計的有意差なしはサンプルサイズの問題の可能性)。
- 浅い〜中等度(ローリング型・毛穴)
推奨:ピコ または モザイク(改善率同等。ピコはPIH低リスク) - 中等度〜重症(深めのボックスカー型)
推奨:CO2アブレーティブが効果力で上回るデータあり - 重症(深いアイスピック・重篤なボックスカー)
推奨:レーザー+PRP / レーザー+サブシジョンが最も高いエビデンス - ダークスキン・色素沈着リスク高
推奨:ピコ一択(CO2はPIHリスクが高い) - お仕事や育児でダウンタイムを取りにくい方
おすすめ:ピコフラクショナル(翌日〜メイク可) - 浅〜中等度のクレーターで回数を少なく済ませたい方
おすすめ:モザイク(モザイクは3〜6回、ピコは5〜10回程度が目安)
ただし、ダークスキン(色素沈着しやすい肌)の重症クレーターでは話が変わります。CO2は効果が高い反面PIHリスクも高く、インド人肌を対象とした2025年の研究ではピコフラクショナルがFitzpatrick III〜V型でPIH0%・64%の患者が26〜50%の改善を達成したと報告されています。この場合は、PIH安全性を優先してピコを選ぶ合理的な根拠があります。
まとめ
・モザイクレーザーとピコフラクショナルは、どちらも非アブレーティブのフラクショナル治療
・複数の比較研究で、改善率は統計的に同等と報告されている
・大きな差はダウンタイムの長さとPIHリスク——ピコの方が有意に低い(メタアナリシスでRR=0.16)
・最終的な選択は「クレーターの深さ」「色素沈着リスク」「ダウンタイムの許容度」の3軸で決まる
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【 参考文献 】
- Li Y, et al. Fractional picosecond laser for atrophic acne scars: A meta-analysis. Journal of Cosmetic Dermatology. 2023. PubMed ID: 37310182 (https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37310182/)
- Comparison of Fractional Picosecond 1064-nm Laser and Fractional Carbon Dioxide Laser for Treating Atrophic Acne Scars: A Randomized Split-Face Trial. PubMed ID: 32910030. (https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32910030/)
- Comparison of 1064-nm Nd:YAG picosecond laser using fractional micro-lens array vs. ablative fractional 2940-nm Er:YAG laser for the treatment of atrophic acne scar in Asians: a 20-week prospective, randomized, split-face, controlled pilot study. PubMed ID: 38034535. (https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38034535/)
- Efficacy and Safety of Treatment with Fractional 1,064-nm Picosecond Laser with Diffractive Optic Element for Wrinkles and Acne Scars: A Clinical Study. PMC8137336. (https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8137336/)
- Optimal treatment options for acne scars in patients with historic acne: a systematic review and network meta-analysis. PeerJ, 2025 / PMC12515001. (https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12515001/)
- Efficacy of a one-session fractional picosecond 1064-nm laser for the treatment of atrophic acne scar and enlarged facial pores. J Cosmet Laser Ther, 2022 / PubMed ID: 35318885. (https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35318885/)
- Chandrashekar BS, et al. Revolutionizing Acne Scar Treatment in Indian Skin with Fractional Picosecond Laser. Sage Journals, 2025.
※本記事は医療情報の提供を目的としており、特定の治療効果を保証するものではありません。治療の適否・内容については、必ず医師にご相談ください。
